返歌その1
自分らしく生きることで後悔の無い人生が歩める。
「自分らしく生きる。」
言い尽くされてきた言葉である。
しかしどれほどの人間がその言葉の意味について熟考したのだろうか。
私は今まで自分らしく生きてきたつもりだった。
大きな選択をするときは、友人に意見を求めたり、インターネットで検索したりして道を選んできた。
LINEの送り方はインターネット。デート先はインターネット。プレゼントはインターネットと友人。
信頼できる友人が多く、コンピューターリテラシーも十分ある自分にしか出来ない、最善の道を常に選び続けられる生き方だと思ってきた。
その選択に私自身の意志はどれくらい入っていただろうか。
それはただ失敗したときの後悔を最低限にするための逃避行動でしかなかった。
確率的には最大値を取る選択が出来ていたから。
失敗しても言い訳が出来るから。
自身の無能さを直視しなくても良いから。
確かに選択の多くはうまくいった。
インターネットはすごいと思ったものだ。
初めてのことでもそれなりに上手く出来ていたんだから。
そして自分の決断に自信が持てない人間になってしまった。
正しい選択肢は常に与えられるものだったから。
自分の選択で大きな成功をした経験が無い。
自分の選択で大きな失敗をし、乗り越えた経験がない。
紛れもない自分の選択に命を懸けたことがない。
疑問点、わからないことは直ぐに検索する時代。
私のような人間は数多く存在し、これからも増え続けるであろう。
純粋培養のもやしのような心を、傷だらけで筋骨逞しい心に育てるのは自分自身しか出来ない。